評価経済社会 その48

常勝にして不敗のいい人戦略。
いい人最強。だから本当のいい人になろう。完全ないい人になろう。戦略なんて偽りだから。
それが罠。


完全なるいい人。戦略の必要がない人。
全てが善意。行いの全てがいい人。あらゆることがいいと評価されるべき人。
自分がいいと思ってしたことが、必ずいいことになる人。
自分がそんな完全ないい人になったら。自分こそがそうであると思ったら。


その人を評価しない人は自動的に嫌な人とされる。完全なるいい人はそんな嫌な人を避ければいい。嫌な世界を捨てればいい。
評価を下げる人は嫌な人。そんな評価は受け取らない。いい評価をくれる都合のいい人のところへ行けばいい。世界は広い。誰かが本当の評価をくれるはず。甘い評価。
自分の気持ち最優先。傷つくところへいることはない。
そうやって集まった人々。


そんな完全ないい人、自分を疑わない人、外の評価を受けられない人、自分と評価のずれを受け止められない人、いつも世界の方が間違っていると考えた人。
そういう人が何をしたか。
そういう人たちが何をしたか。
知っている。


いい人戦略。所詮戦略。振り返ってみて自分がそんなにいい人だったか。
ただその時そうしただけ。それほどいい人じゃなかった。どこか恥ずかしい。
あの人をいい人だと思ったけれど、内心はどうせ戦略。相手だって善意とは限らない。
どちらも完全ないい人ではない。そんなの信じられない。


でも完全ないい人になったら、きっとああなってしまう。
それでも大丈夫な人にはきっとなれない。いっそならないようにする。怖いから。


いい人ぶってもいつも思ったとおりにはならない。でもその可能性なしにいい人にはきっとなれない。相手がいることだから。
いい人は切ない。折角いい人になろうとしたのに切ない。
でもいつも切ないであろう、完全ないい人になるよりはましだろう。